毎日の中で、「なんでこんなに落ち込むんだろう?」や「自分だけが嫌な思いをしている気がする」と感じたことはありませんか?
もしかしたら、それは「認知の歪み」と呼ばれる心のメカニズムが影響しているかもしれません。今回は、その認知の歪みについて詳しくご紹介します。
1.認知の歪みとは?
認知の歪みとは、物事を捉える際に、現実とは異なる歪んだ視点を持つこと。つまり物事の捉え方に歪みがある状態のことを指します。
わかりやすい例を挙げてみましょう。
例えば、友達があなたに向かって微笑んでいるのを見たとします。友人にとってその微笑みはあなたに対して好意的な意味の微笑みだったとしても、認知の歪みが働くと「あの人は私をからかっているのではないか」と思ってしまう事があります。このように、同じ事実でも異なる捉え方をしてしまうことが認知の歪みの特徴です。
それでは、認知の歪みの中でも代表的な10項目と、それぞれの具体例を見ていきましょう。
1.白黒思考(オール・オア・ナッシング)
物事を極端に白か黒に分けてしまう思考のことです。例えば、自分が小さなミスをしただけで「私はダメな人間だ」と全体を否定してしまったり、他人に対しても「完璧」か「完全に失敗」かの2つに分類してしまったりします。
(例)
– 「自分はできないことばかりだから、何をやっても無駄だ」
– 「この仕事は完璧にやらないといけない。でなければ、何も意味がない」
2.過度の一般化
一度の失敗や出来事をもとに、同じことがいつも続くと思い込んでしまうことです。少しの出来事をもとにして「いつも」「常に」といった言葉を使ってしまうことがあります。
(例)
– 「私は何をやってもうまくいかない。いつもこんなことだ」
– 「あの人は私のことを嫌っている。絶対に気に入られない」
3.ポジティブ要素の否定(マイナス思考)
良いことがあっても、それを否定してしまうことです。自分の成功や良い点を見過ごし、ネガティブな側面だけに目が向いてしまうことがあります。
(例)
– 「この仕事は順調だけど、それでも私の能力は未熟だ」
– 「友達から褒められたけど、それはただのお世辞だろう」
4.結論への飛躍
根拠のないままに、未来の結果を決めつけたり、他人の意図を勝手に決めつけたりすることです。ただし、これは現実とは異なる可能性を創り出すこともあります。
(例)
– 「明日のプレゼンは絶対に失敗するだろう。何を言ってもみんな私を笑うだろう」
– 「彼は私を避けている。絶対に私のことを嫌っているに違いない」
5.フィルタリング
良いことよりも悪いことに焦点を当ててしまうことです。全体の中で一部のネガティブな要素だけを拾い上げ、ポジティブな要素を見落としてしまいます。
(例)
– 「この旅行は楽しかったけど、ホテルのサービスが最悪だったから台無し」
– 「この人はいいことばかり言っているけど、実際はひどい人だ」
6.感情に基づいた判断
自分の感情を根拠にして、そのことが事実だと考えてしまうことです。自分の感じることを客観的な事実として受け入れてしまうため、感情に振り回されることがあります。
(例)
– 「彼の態度が冷たかったから、私を嫌っているに違いない」
– 「この映画は私にはつまらない。だから他の人もきっとつまらないと思う」
7.過剰な拡大解釈
小さな出来事を大げさに評価したり、逆に重要なことを軽視したりすることです。これにより、出来事の実態よりも過度な評価や軽視が生まれます。
(例)
– 「このミスが原因で仕事が全滅するんじゃないか」
– 「あの人の一言で、私は完全に無価値な存在だと感じた」
8.ラベリング、レッテル貼り
一度の失敗や行動に基づいて、自分や他人にネガティブなラベルを貼ってしまうことです。これにより、そのラベルに縛られた行動や思考が生まれます。
(例)
– 「この仕事が失敗したから、私は無能だというレッテルが貼られた」
– 「あの人は一度でも私を裏切ったから、信頼できない」
9.個人化と非難
自分には関係のない出来事や問題に対して、自分を責める傾向があります。それによって他人の行動や状況を自分の責任と結びつけてしまいます。
(例)
– 「家族の問題が起きたのは、私がもっと助けてあげるべきだったからだ」
– 「友達が悲しんでいるのは、私がなにか悪いことをしたからだ」
10.「すべき」化
物事に対して理想的な「すべき」や「であるべき」が存在し、それを満たさないことに対して落ち込んだり、他人に対しても同じような期待を抱いてしまうことです。
(例)
– 「今日も運動しなかった。本当は毎日運動すべきだったのに」
– 「上司は私たちにもっと指示を出すべきだ。私たちが何をすべきか分からない」
認知の歪みを治す方法
認知の歪みは誰にでもあるものですが、気づいたらその影響を軽減する方法を試してみましょう。
- 紙に感情を書き出す… 認知の歪みが起きた状況や感情を紙に書き出してみましょう。客観的に自分の思考を見つめることで、歪みを気づくことができます。
- カウンセリングを受ける…専門家のカウンセリングを受けることで、自分の認知の歪みを客観的に見つめる手助けを受けることができます。
- 行動の変化を意識する…感情は変えにくいかもしれませんが、行動を変えることは可能です。歪んだ感情に振り回されず、建設的な行動を心がけてみましょう。
まとめ
認知の歪みを理解し、その影響を軽減することは、より健康的で幸福な心の状態を築く一歩となることでしょう。自分を客観的に見つめ、ポジティブな思考を育むことで心を安定させていきましょう。
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